2017-12-26
 エミールのプロ家庭教師が、生徒さんへの思いや仕事への姿勢を綴ったコラムです。
 是非、ご一読ください。

「頑張れ! 頑張れ?」
 毎年12月31日の夕刻のニュース番組では、「それぞれの大晦日」といった世間の様子が紹介されます。買い物客でごった返す市場、閑散としたオフィス街…そんな中で、進学塾の授業風景もよく取り上げられます。そこに映し出されるのは、「絶対合格」と大きく掲示された教室で、「必勝」と染め抜いた鉢巻きを締めて勉強する小学生・中学生。そして同じ鉢巻をつけ、ハイテンションで授業を行う講師の姿。おそらく、受験とは無縁の人が「受験」と聞いて連想するのは、このひとコマでしょう。画面からは、キャスターの「子ども達、頑張っていますね」というコメントとは裏腹に、「まだ子どもなのに、年末年始も(親に)勉強させられてかわいそう」という負のイメージも伝わってきます。確かに、年末年始に実施される進学塾の特訓授業には賛否両論あります。授業内容そのものは、もし何か事情があって参加できなくても、それが直接合否にかかわると思えるものではありません。しかし、仲間(ライバル)と一緒に「頑張る」ことで士気を高揚させ、その勢いのまま受験本番を迎えるには大変有意義なイベントと言えます。
 入試本番間近のこの時期、われわれ家庭教師も親御さんも、つい生徒に「頑張れ!」と声をかけてしまいます。本人のためを思っての言葉ですが、場合によってはマイナスに作用する時があります。
 20年ほど前、当時大学生だった私が担当した生徒で、毎年この時期になると思い出す生徒がいます。彼はとても頑張り屋で、塾の宿題も私が課した宿題も手を抜かずにきちんとこなし、成績は上位でした。ところが、どういうわけか入試三日前の指導時に、イージーミスを連発しました。「そんなことでどうする。もっと頑張れ!」と叱責する私に、彼は「僕、これ以上よう頑張らん! 先生、僕が頑張ってないように見えるん?」と、訴えるように応えました。その言葉は、反省ではなく悲哀に満ちたものでした。
 われわれ家庭教師は、腰の上がりにくい生徒を強力に引っ張っていくことを求められますが、ただ「頑張れ!」と唱えるだけではなく、「何が必要で、どのように頑張ればよいのか」具体的な方法を示さなければいけません。その時の私は、生徒ではなく自分を基準に彼に接していたのです。反省すべきは私の方でした。
 今、プロ家庭教師として活動しながら、こんなことを考えています。「生徒の理解が不充分ならば、当然生徒に合う指導法を工夫しなければならない。工夫は教師を成長させる。全く同じ生徒はいないのだから、日々工夫を迫られる。その意味では、家庭教師に終わりや完璧はない。だからこそ、この仕事は面白い」と。


 頑張る方法を工夫する先生がいます。        エミールの家庭教師


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